ウタチャンホムペ

たまに質問に答えたり、絵を描いたりします。リンクフリーです。いつもはここにいます→ツイッター@uta914

出ない神本より出る糞本(もとい、駄作を出す勇気)

ふと今書いてるマンガがすげーつまんないんじゃないかって冷静になってるんですけど書き直すべきですか?

 

 


書き直して今より確実に面白いものが書けて、尚且つ締切にぜったい間に合って、自分がそうしたいなら書き直すべきでしょうね。
今からもう1度、1からプロット切り直して間に合いますか?今よりいいもの絶対書けますか?やっぱりさっきのやつにしとけばよかった……って後悔しません?
描いてる時にふと冷静になってしまう時、こんなの面白くないんじゃないか……そう思ってしまうこと、誰しもあると思います。
ですが!!!!!!そんなときのおまじないを教えてあげます!!!
出ない神本より出る糞本!!!!!!!!!!!!!!出ない神本より出る糞本!!!!!

 

(…と答えたら、別の方から質問が来ました)

出ない神本より出る糞本…他の方の質問への答えですが、原稿中なので気になりました。

しかし糞本は買ってしまった人の損した感を煽りこのサークルの本は二度と買わないと思わせてしまわないでしょうか

そして捨てられるか売られるかで資源の無駄として終わらないでしょうか。

イベントに参加する以上は本をと思いますが、糞本でも出す意味はあるのでしょうか。

 


すみません、言葉のチョイスを誤りました。大変に誤解を産む言葉だったと思います。
ここは一つ島本先生のお言葉をお借りします。私が言いたかったのは「駄作を出す勇気」と言うことです。


同人は仕事ではありません。
仕事で描く漫画、いえ、漫画に限らず仕事と言うものはすべて期限までにあげられなければ、社会的信用を失い、己の首を締めてゆくことでしょう。
しかし、同人にそう言った意味での本当の「期限・締め切り」というものはありません。
時間をかけたらかけたぶんだけ、良いものが出来る…作画に限ってはそうでしょう。
作画の面で納得がいかないなら、イベントを見送り、次のイベントに合わせて最高の状態に仕上げる…非常に意識が高く、大いに素晴らしいことだと思います。


しかし、私がうけた質問は「描いている途中(恐らく作画に入ってから)このネームは面白くない気がする、書き直すべきか?」という質問です。


このネームは面白くない気がする、最高の本を出すために今回のイベントでは新刊を見送ろう。途中まで描いたこの原稿は封印して、次回のイベントのために今からもっと良いネームを切ろう。
この決断をした人は次のイベントのために新しく切ったネームを最後まで「これは最高のものが出来るぞ!」と思いながら描けるでしょうか。


いえ、私はそうは思いません。
また次の作画をしている時も「やっぱりこの話、面白くないかも…」と思う時がくるでしょう。
そして一度原稿を途中でやめた人は…最後まで描き切ることが、今後できますでしょうか?


一つのことを最後までやり遂げられない人は自己評価だけが膨らみ、「私はもっと出来る人間のはず」と思い込み、そして実態のない「最高に面白い本」を作るために、何度も何度も何度も描きかけの原稿を破棄することになるでしょう。


プロの漫画家さんは常に最高のパフォーマンスを発揮するために、描きかけの原稿を破棄して、より良いものを描く必要があるときもあるでしょう。
プロの漫画家さんは、読者をつかむことも仕事の一つですから。
でも、先の質問。私は同人誌のことだと思ってお答えしました。


そして以下はわたしの同人に対するスタンスの話になりますが…
わたしは、同人誌を読者のために描いていません。
買って読んでいただけることは、ものすごくものすごく嬉しい、ありがたい!!!!そう思います。読んだ人が、つまらないと思ったり、損したと思ったんなら、申し訳ないなあと思います。

そして、つまらないと思われたその同人誌が捨てられることもあるでしょう。
でも、それを資源の無駄とは一切思いません。そもそも資源の無駄を気にするなら本なんて出してません。


同人誌を出すことは、私にとって心を整理することなんです。そう言った意味で、たとえ糞本でも出す意味は大いにあります。私にとっては。


何かを一つやり遂げること、ここではそれが本を出すことなんですけど、何かを成し遂げた時、人はものすごく成長します。


それが「本」という実態のあるものとして作り出されたものの場合、それを手にした時の達成感、何物にも変えられません。


例えそれが満足いかない出来だったとしても、「何かを成し遂げた」それだけで、何かが変わります。
納得いかない本を出してしまった時は、それを次の反省に活かせばいいじゃないですか。


大体、世の中全員が納得して、受け入れる本なんてあるわけないじゃないですか。特に同人誌なんて趣味嗜好が出るものですから。


貴方が糞本だと思って出した同人誌、案外多くの人の心に響いてるかもしれませんよ。